建設業許可

建設業許可とは

建設業許可とは、建設業法に定められており、一定の要件を備えた者に国や都道府県が許可を与える制度です。建設工事の完成を請け負うことを営業とする場合は、例外的な場合を除いて、許可区分ごとに、また業種ごとに許可を受けなければなりません。建設業の許可を受けるための流れは以下のようになります。

  1. 29種類に分類された業種の中から許可を受けたい業種と営業を行う地域を決定する
  2. 所定の許可申請書や添付書類を作成する
  3. 許可を受けるための一定の要件を備えたことを証明できる確認書類等を収集する
  4. 管轄する行政庁に書類を提出する

建設業許可が必要な場合

建設業を始めようとする場合(建設工事の完成を請け負うことを営業とする場合)、必ずしも許可が必要なわけではありません。

ただし、許可を受けないで請け負える建設工事は「軽微な建設工事」のみになります。つまり、常に「軽微な建設工事」のみを受注する建設業者であれば許可を受ける必要はありませんが、「軽微な建設工事」以外の工事を請け負う場合は許可が必要になります。

  • 「軽微な建設工事」のみを受注する建設業者であっても建設業許可を受けることはできます。
  • 「軽微な建設工事」のみを受注する建設業者は、例外的に建設業の許可を受ける必要がないだけであり、その建設業者が建設業法の対象にならないというわけではありません。

「軽微な建設工事」とは

「軽微な建設工事(=許可を受けなくても請け負うことができる工事)」とは、下記に該当する工事となります。

  • 建築一式工事以外の場合[A]

1件の請負代金が消費税込みで500万円未満の工事

  • 建築一式工事の場合[B]

①1件の請負代金が消費税込みで1,500万円未満の工事

②請負代金の額に関わらず延べ床面積が150㎡未満の木造住宅工事

 

 

「軽微な建設工事」に該当するかどうかをチェックするには、まず請け負う工事がAかBのどちらに該当するか、つまり建築一式工事かそれ以外かを考えます。

  • [A]に該当する場合

1件の請負代金が消費税込みで500万円未満の工事であれば、「軽微な建設工事」となりますので許可は必要ありません。

  • [B]に該当する場合

最初に①に該当するかどうかを考え、該当すれば(1件の請負代金が消費税込みで1,500万円未満の工事であれば)「軽微な建設工事」となりますので許可は必要ありません。①に該当しない場合(1件の請負代金が消費税込みで1,500万円以上の工事の場合)は、次に②に該当するかどうかを考え、②に該当すれば(延べ床面積が150㎡未満の木造住宅工事であれば)「軽微な建設工事」となりますので許可は必要ありません。

 

  • 木造住宅とは「主要構造部が木造で2分の1以上を居住に供するもの」とされていますので、2分の1以上を店舗に使用する場合は、延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事であっても許可が必要になります。
  • 上記の「150㎡未満」とは、建築基準法上の延べ面積の定義に準拠し、「建築物の各階の床面積の合計」となります。
  • 建築物の解体工事を行う場合は「軽微な建設工事」であっても解体工事業の登録が必要になります。ただし、「土木工事業」「建築工事業」「解体工事業」のいずれかの許可を受けている場合は必要ありません。
  • 請負代金の算定にあたっては、以下の2点に注意しましょう。
  1. 一つの工事を2つ以上の契約に分割して請け負うときは、正当な理由がある場合を除いて、それぞれの契約の請負代金の合計額になります。例えば注文書を2つに分けて、各々が500万円以上にはならないから許可は必要ないということにはなりません。
  2. 注文者が材料を提供する場合は、請負契約額に提供された材料費(市場価格)及び運送費を加えたものが請負代金の額になります。

許可を受けずに「軽微な建設工事」の限度を超える建設工事を請け負った場合

建設業法違反となります。許可を受けないで許可が必要な建設業を営んだ者は、無許可営業として3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。また、建設業許可を受けていない業者と下請負契約を締結した業者も建設業法違反となります。

 

元請と下請とでは建設業許可が必要かどうかに違いはあるの?

違いはありません。「軽微な建設工事」以外の工事を請け負う場合には、元請であるか下請であるかに関係なく許可を受ける必要があります。また、個人であるか法人であるかも関係ありません。

 

許可を受けた後は何もしなくていいの?

許可取得後、建設業の許可を受けた建設業者は建設業に関連する変更があった場合は許可行政庁に対して変更の届出をする必要があります。また、建設業許可の有効期間は5年間ですので、引き続き営業を行う場合は更新の手続きをすることが必要になります。

 

■変更届

届出なければいけないものとしては、大きく分けて以下の2つがあります。

  • 決算変更届(事業年度終了届)

決算変更届は事業年度終了後4ヶ月以内に必ず毎年提出しなければなりません。

  • その他の変更届

 下記事項に変更があった場合は各届出期限までに変更届を提出しなければなりません。

 

変更後2週間以内

経営業務の管理責任者の変更等 変更後2週間以内

専任技術者の変更等

国家資格者・監理技術者の変更等

令3条使用人の変更等

 

変更後30日以内

営業所・役員に関する基本情報の変更等

 

■更新手続き

建設業許可の有効期限は5年間とされており、引き続き建設業を営業する場合は期間満了の30日前までに更新申請の手続きが必要となります。5年ごとの更新を怠ればその許可は失効してしまい、営業することができなくなりますので注意が必要です。

 

建設業許可の区分

建設業の許可は、許可を受けようとする者がどのように建設業の営業所を置いているかにより、都道府県知事許可または国土交通大臣許可に区分されます。また、請け負う工事について下請けに発注する金額の多寡により、特定建設業許可または一般建設業許可に区分されます。なお、同一の建設業者が都道府県知事許可と国土交通大臣許可の両方の許可を取得することや、同一の業種について特定建設業許可と一般建設業許可の両方の許可を取得することはできません。

 

知事許可と大臣許可

  •  知事許可

1つの都道府県に営業所を設ける場合

  • 大臣許可

2つ以上の都道府県に営業所を設ける場合

 

一般建設業許可と特定建設業許可

  • 特定建設業許可

発注者から直接請け負った工事を施工するときに、消費税込みで合計4,000万円以上(建築一式工事では消費税込みで合計6,000万円以上)を下請けに出す場合

  • 一般建設業許可

上記以外の場合

 

営業所とは

「営業所」とは、本店若しくは支店又は常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいい、一般的には次の1~4の条件を満たしていることが必要となります。したがって、建設業に全く無関係な事業所はもちろん、建設業と関係があったとしても単なる登記上の本店、連絡所、資材置場、臨時で設置されている工事事務所、作業所などはこの「営業所」には該当しません。

  1. 請負契約の見積りや契約等の実体的な行為を行っていること
  2. 上記1に関する権限を持っている者(主たる営業所の場合は経営業務の管理責任者、従たる営業所の場合は令3条の使用人)が常勤し、欠格要件に該当していないこと
  3. 許可を受ける業種の(その営業所で営業する許可業種に対応する)専任技術者が常勤していること
  4. 固定電話、机、各種事務台帳等を備えていること

本店又は支店は常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行うなど建設業に係る営業に実質的に関与する事務所であれば「営業所」に該当します。

 

山形市に本店があって、新庄市に支店がある場合は知事許可?大臣許可?

山形市も新庄市も同じ山形県内ですので、知事許可となります。

 

知事許可だと他県で工事ができなくなるの?

知事許可と大臣許可の区分は、建設業を営む営業所がどこに置いてあるかという許可制度上の分け方です。したがって、知事許可であっても他県で工事ができないわけではなく、他県の現場であっても必要な技術者を配置して施工することができます。

 

一次下請業者が二次下請業者に再下請に出す場合も特定建設業許可が必要になるの?

特定建設業の許可は、直接請け負った元請業者のみが必要とされますので必要ありません。

 

建設業29業種

建設業法では建設工事を2つの一式工事と27の専門工事に区分しています(平成28年6月1日より新たに「解体工事業」が29業種目として追加されました)。建設業を営む場合には、その営業する業種ごとに建設業の許可を受ける必要があります。なお、同時に2つ以上の業種の許可を受けることも可能です。

 

一式工事と専門工事

29業種のうち「土木一式工事」と「建築一式工事」の2つの一式工事は、総合的な企画、指導及び調整の下に土木工作物又は建築物を建設する工事で、その中には複数の専門工事を組み合わせて構成される工事(例えば住宅の建築での大工工事、左官工事、屋根工事、電気工事等を組み合わせた工事)のほか、単一の専門工事であっても、工事の規模や複雑性から判断して個別の専門工事として施工することが困難な工事も含まれるとされています。

一方、専門工事は、土木工事や建築工事の工程や作業を細分化したものであり、左官工事、屋根工事、塗装工事等の工事内容の専門性に着目して区分された個別の工事種類で、一式工事を除く建設工事のことをいいます。

 

一式工事の許可のみを持っている場合、500万円以上の専門工事を単独で請け負えるの?

できません。一式工事の許可はどんな工事でも請け負えるといった万能な許可ではありませんので、個別の専門工事の許可が必要となります。

 

一式工事の許可のみを持っている者が一式工事として請け負う工事に専門工事が含まれている場合

「軽微な建設工事」以外の専門工事を請け負う場合には、工事の種類に応じた専門工事の許可が必要になりますが、一式工事の許可のみをもっている者が一式工事として請け負う工事の中に専門工事が含まれる場合は、その専門工事業の許可を持たなくても施工することができます。

ただし、その専門工事についての主任技術者の資格要件を満たす者を専門技術者として配置して施工することが必要になります(受注した一式工事の主任技術者や監理技術者との兼任可能)。もし主任技術者を置くことができない場合は、その専門工事業の許可を受けている建設業者に下請けさせるなどして当該工事を施工することになります。

 

建設業許可5要件

設業の許可を受けるためには絶対的な5つの要件があります。これらの5つの要件を満たさずに許可を取得することはできませんので、まずは5つの要件を満たしているかチェックしてみましょう。

 

【要件1】建設業の経営業務について総合的に管理する経営業務の管理責任者がいること

経営業務の管理責任者とは、許可を受けようとする建設業に関し、建設工事の施工に必要な資金の調達や技術者の配置、契約の締結等の経営業務を管理する責任者をいいます。

 

【要件2】営業所ごとに専任の技術者がいること

専任の技術者とは、営業所に常勤して、専ら請負契約の締結やその履行の確保のための業務を行なう者をいいます。

 

【要件3】請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること

軽微な建設工事以上の工事を請け負えるだけの資金を確保していることが必要になり、この判断基準として一定額の財産の有無が審査されます。

 

【要件4】欠格要件に該当していないこと

申請者が法人の場合はその法人・法人の役員等・令3条の使用人、個人の場合はその本人・支配人・令3条の使用人が欠格要件に1つでも該当してしまうと許可が受けられません。

 

【要件5】請負契約に関して誠実性があること

「誠実性を有すること」とは、請負契約に関して「不正又は不誠実な行為」をするおそれが明らかな者でないことをいいます。

 

許可の申請区分

新規申請

以下のような場合は新規申請になります。

  • 新規

現在、有効な建設業許可をどこの許可行政庁からも受けていない場合

 

  • 許可換え新規

他の都道府県知事許可から山形県知事許可に変更する場合

山形県知事許可から国土交通大臣許可に変更する場合

国土交通大臣許可から山形県知事許可に変更する場合

 

  • 般・特新規

一般建設業許可のみを受けている者が特定建設業許可を申請する場合

特定建設業許可のみを受けている者が一般建設業許可を申請する場合

 

更新

建設業許可の有効期間満了後も引き続き営業する場合は更新申請が必要です。

  • 更新時期

有効期間満了の30日前まで(有効期間5年間)

 

業種追加

以下のような場合は業種追加申請になります。

  • 一般建設業許可を受けている者が他の一般建設業許可を申請する場合
  • 特定建設業許可を受けている者が他の特定建設業許可を申請する場合

決算変更届

建設業許可を受けた建設業者は、事業年度終了後に決算変更届を毎年提出する必要があります。

  • 変更事由

事業年度を経過したとき

  • 届出期限

事業年度終了後4か月以内

 

各種変更届

経営業務の管理責任者の変更等

  • 変更事由

経営業務の管理責任者が交代したとき

経営業務の管理責任者を追加したとき

経営業務の管理責任者を削除するとき

  • 届出期限

事実発生後2週間以内

 

専任技術者の変更等

  • 変更事由

専任技術者を追加するとき

専任技術者の担当業種・有資格区分に変更があったとき

専任技術者を削除するとき

  • 届出期限

事実発生後2週間以内

 

営業所・役員に関する基本情報の変更等

  • 変更事由

営業所を新設・移転したとき

⇒同時に令3条使用人の変更、専任技術者の変更も必要になります。

 

営業所を廃止したとき

⇒同時に令3条使用人の変更、専任技術者の変更も必要になります。

 

営業所の業種を追加したとき

⇒同時に令3条使用人の変更、専任技術者の変更も必要になります。

 

営業所の業種を廃止したとき

⇒同時に専任技術者の変更も必要になります。

 

商号名称の変更をしたとき

資本金額(出資金額)を変更したとき

代表者の変更があったとき

役員等の就任があったとき

役員等の辞任又は退任があったとき

支配人の就任があったとき

支配人の退任があったとき

  • 届出期限

事実発生後30日以内

 

令3条使用人の変更等

  • 変更事由

令3条使用人を追加するとき

令3条使用人に変更があったとき

  • 届出期限

事実発生後2週間以内

 

解体工事業の新設

平成28年6月1日よりとび・土工工事業から解体業が独立し、新たに29業種目として「解体工事業」が新設されました。これにより「軽微な建設工事」以外の解体工事を請け負う場合には「解体工事業」の許可が必要になります。ただし、経過措置として施行日(平成28年6月1日)時点において、とび・土工工事業の許可を受けて解体工事業を営んでいる建設業者は、施行日から平成31年(2019年)5月31日までの3年間は解体工事業の許可を受けずに解体工事を施工することができます。

平成31年(2019年)6月1日以降も解体工事業を営む場合は、平成31年(2019年)5月31日までに解体工事業の業種追加申請をする必要があります。

 

解体工事業の許可が必要な場合(解体工事業の区分)

以下のすべてに該当する場合に解体工事業の許可が必要になります。

  1. 「軽微な建設工事」以外の工事を行う
  2. 解体のみを行う
  3. 土木一式工事・建築一式工事で作ったものを解体する

解体を伴う新設工事の場合は、解体工事は附帯工事になるため、各専門工事又は一式工事で施工することになります。また、解体のみであっても各専門工事で作ったものを解体する場合は専門工事となります。

 

経営業務の管理責任者の要件

経過措置として、施行日(平成28年6月1日)前のとび・土工工事業に係る経営業務の管理責任者としての経験は、解体工事業に係る経営業務の管理責任者の経験とみなされます(下記1)。したがって、解体工事業の経営業務の管理責任者になるための要件は以下のいずれかに該当する者となります。

  1. 平成28年5月31日以前のとび・土工工事業について5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者(経過措置)
  2. 解体工事業について5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
  3. 上記1.2.以外の建設業で6年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者

新たな解体工事業の専任技術者要件

解体工事業の専任技術者の要件については以下になります。

 

(1)監理技術者(特定建設業許可の専任技術者)の資格等は次のいずれかに該当する者

  1. 1級土木施工管理技士(※1)
  2. 1級建築施工管理技士(※1)
  3. 技術士(建設部門又は総合技術監理部門(建設))(※2)
  4. 主任技術者としての要件を満たす者のうち、元請として4,500万円以上の工事に関し2年以上の指導監督的な実務経験を有する者

(2)主任技術者(一般許可の専任技術者)の資格等は次のいずれかに該当する者

  1. 上記(1)の監理技術者のいずれかに該当する者
  2. 2級土木施工管理技士(土木)(※1)
  3. 2級建築施工管理技士(建築又は躯体)(※1)
  4. とび技能士(1級)
  5. とび技能士(2級)+3年以上の解体工事実務経験
  6. 建設リサイクル法の登録試験である解体工事施工技士
  7. 大卒(指定学科)3年以上、高卒(指定学科)5年以上、その他10年以上の実務経験
  8. その他「専任技術者の実務経験要件の緩和」

(※1)

1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士(土木)、1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(建築、躯体)の平成27年度までの既存合格者については、解体工事に関する実務経験1年以上又は国土交通大臣の登録を受けた講習(登録解体工事講習)の受講が必要になります。

(※2)

技術士については、当面の間、解体工事に関する実務経験1年以上又は国土交通大臣の登録を受けた講習(登録解体工事講習)の受講が必要になります。

 

専任技術者要件の経過措置

施行日から平成33年(2021年)3月31日までの5年間は、とび・土工工事業の技術者(既存の者に限ります)も解体工事業の技術者としてみなされます(経過措置)。

ただし、「みなし技術者」であるため、経過措置期間内(平成33年(2021年)3月31日まで)に以下のいずれかの対応をしなければ、平成33年(2021年)4月1日以降は本来の解体工事業の技術者とはなれず、解体工事業の許可を失効することになりますのでご注意下さい。

  1. 要件の満たした専任技術者への変更届を提出する
  2. 同一の技術者で対応する場合は、解体工事に関する実務経験証明書1年以上又は登録解体工事講習終了証をもって有資格区分の変更届を提出する
山形・天童の行政書士佐藤陽介事務所|建設業許可|産業廃棄物収集運搬業許可|古物商許可|相続手続き|離婚相談